Saturday, May 24, 2008 - 12:48 am

部長、お許しください!

「来た、サラリーマンが。」

玄関に目をやると、中谷が玄関から入ってくるのが見
えた。

金曜日だから、今日も相変わらずスーツ。まさに「サラ
リーマン」だ。

「部長、おはようございっす!」

「ええ、ええ。仕事、仕事。皆さんお疲れ様。」歌って
るように部長は俺らに挨拶を。こんなに仕事の好きな
人間は、おそらくあいつしかいない。

「皆集まってくれたね。」ラウンジにいた俺らに見回し
た。「今日の会議、なんだっけ…」記憶を探りながらか
ばんからフォルダーを取り出した。革製のかばんで、
一見サラリーマンの通勤用のものにしか見えない。

「あ、熱科学っか。」ようやく空白のレポート用紙を見
つけた。

隣の席の井原はコツコツとレポートを写してるところ
だった。背中を曲げながら、一生懸命と。

ラウンジはもともと談話用なんで、机はちょうど足を乗
せる高さのものだ。そこでレポートを書くものじゃない。
姿勢がよくなくて、猫背の原因となるのだ。

部長は上席に腰をかけた。

「あのさ、俺よおく考えたんだ。何で俺の答えが全部
不正解なのか、と。前回三回もな…」部長はため息を
ついた。

「マジかよ?」

「ええ、だから、俺はだめ人間なんじゃないかと思うの
さ。最初から答えを写せばマシなのに…だから、決心
したんだ。今日からコピーさせてもらおう、と。」

いかにも真剣なようなので、こちらも感心したのだ。

だが、それにもかかわらず、少し心配し始めた。「あっ
てるって保証できないんだけど…」

「ううん、間違ったとすれば、それは神からの罰にしか
思えない。」

名言を連発して、さすが部長だ。

レポートを提出してから、「肉屋さんのオヤジ」は問題を
解説し始めた。

スライドを見たとたん、「へぇ~まさか?」とびくっとした。

ショック中の部長は、髪を引っ張ろうでもするかのよう
だった。胸を叩いて、衝撃の響きを鎮めようとしてたの
かもしれない。

部長、お許しください!

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